アスパラの栽培において、畝に土を盛るのか盛らないのか。
その良し悪しや方法まで、是非について論じることがあります。
畝に培土してある見やすい写真はこちら。
地平面からは10-15cm畝が高くなり、通路の土を盛るため、
高低差は20-30cm、時には40cmつけることもあります。
培土をなぜするか。
・土を混ぜるため
アスパラは永年草なので土は表面しかいじれません。
培土と廃土を繰り返すことで畝に土と混和した肥料を与えます。
・除草効果
春の収穫開始から1ヶ月。草もいい加減伸びてきます。
それを培土で覆うことで草を抑えてしまいます。
春も、土を崩す(排土)ことで草を排除できます。
・夏アスパラ収穫の負担軽減
夏はアスパラの生育した草の下にもぐって収穫します。
腰を曲げっぱなしなので、畝が高いほうが体への負担が少ない。
・培土と排土を繰り返すことで株を水平に成長
アスパラの株は地表面から15-20cmのあたりを水平方向に成長します。
深いと上に上がってくるし、浅いと下にもぐっていきます。
ホワイトアスパラを作っていると株が浮いてくるんだよな、とは良く聞きます。
・倒伏防止
倍土することで株元に土が多くなるので、倒伏をある程度防げます。
倒伏しないということは病気が減ることにもつながります。
・その他の期待効果
土の中にいるほどアスパラは太くなりますので、
細くなりがちな夏アスパラの太さを保つことも期待しています。
うちやま農園では上記の理由や作業体系から培土排土しますが、
アスパラの単位面積あたりの最高収量を誇る佐賀では、
土を動かさないことを基本としています。
培土排土しないことでのメリットもたくさんあります。
・病気リスク低減
病気になる原因は土にあります。
その土がアスパラに接する培土を避けるほうがリスクは減ります。
・草対策
土をかけて除草、もありますが、土を動かさないで
出てくる草をとり続けることで数年後には草がほとんど生えなくなるそうです。
永年草のアスパラならではの発想だと思います。
・作業が大変
培土には作業機が必要になりますし、実は立茎開始時期は
たくさんの作業が重なることが多いので、時間を取れないのも現実です。
培土しない代わりに、堆肥でマルチするとか籾殻をまくとか、
代替の方法もありますが、作業を省力化する方がいいですよね。
・そもそも必要ない
点滴潅水にしり肥料は上から散布するだけでいいから土を混ぜなくていいし、
ハウス内だから倒伏防止の必要がなかったり、手間を省くことができます。
それぞれのやり方があり、だいたいどちらかでずーっと進むので、
培土を選んだ人は、低くて収穫しにくいとか肥料混ざらないとか言いますし、
土を動かさない人は、作業時間が多いとか草生えるとか言います。
ここでも農業の最大効率文句である、「適地適作」になります。
その土地や環境や栽培方法などによって選ぶ方法が異なります。
培土の歴史については定かなことはわかりませんが、
アスパラ栽培は気候があっているという理由で北海道から始まっています。
露地栽培である程度の面積を前提としていましたし、
機械化も進んでいる50年位前に広まりましたので、
前提となっていた条件からは培土排土を基本とした理由がわかります。
10年とれればいいかな、とか、春だけの収穫とか、
とにかく省力化したいという作り手には、土を動かさないことをお勧めしますが、
その際の除草については考えておかないと、
除草剤では(もちろんテデトールにも)限界があります。
今ある機械を生かしてできるだけ省力化することを第一とすることをお勧めします。
また暖地は暖地の理由があると思うので、そこまでは聞いた話でしか判断できません。
培土排土に関しては、機械を利用するのもいいと思います。
実際に機械での作業は手と違って均一化できるので、
株の深さのばらつきを減らすこともできます。
実際の作業では、アスパラの株ひとつひとつの深さも大事なので、
植えるときの株の深さについては、とても重要なのです。
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ここからはうちやま農園の春の作業の続きで、排土と焼却について。
排土を春の収穫前に、培土を春の収穫後に行いますので、
排土されている期間は1ヶ月半から2ヶ月くらいです。
それ以外の10ヶ月は冬季間ももちろん培土のままです。
土を崩すことで、これまで作った土の状態がわかることもあります。
やわらかいのか硬いのか、水分の含み方はどうか、などなど。
毎年一回のことなので初めはわかりませんが、
私も5年くらいたってわかるようになりました。
排土の方法は鍬で手作業が基本ですが、
露地ではトラクタに作業機をつけてガーッと行います。
トラクタを圃場に入れることはあまり良くないのですが、
露地は面積が多いためにある程度の効率化が必要です。
ハウスでは300㎡で3時間ほど排土にかかりますので、
1反だと10時間になりますから、けっこうな時間ですね。
機械だと性能によりますが1反5分~1時間くらい。
排土の前に、アスパラの殻を持ち出すのはもちろん、表面を焼却します。
昨年にアスパラの病気がついた擬葉が土に落ちているので、それを焼きます。
排土の後では病気が隠れてしまいます。
アスパラは永年草なので、何年も重ねてきたことが
ある年に急に症状として現れます。
その症状がでないように、小さいことの積み重ねが必要です。
表面に落ちた病原菌(北海道では斑点病、暖地では褐斑病)も、
数年間の蓄積では何もおこりませんが、土の中で死ぬことはありませんので、
花粉症のように、ある程度たまったら突然症状として現れます。
わかってからではもう遅い。
アスパラは10年以上作れて本物です。
なぜなら、生理上は7年くらいは成長するものだからです。
それ以上作るのは、本物の技術が必要です。
ところが、7年くらいまで右肩上がりの成長を続けるものだから、
作り手は自分のやり方が正しいからだ、と勘違いをするものです。
だから、10年くらいたったときに症状が出ても、
何が悪かったのかわからずに、「アスパラは10年でだめだ」といい、
やめてしまう人が多いし、普及員もそういうもんだと言って普及します。
違いますから(笑)
もちろん、技術の中には病気の予防以外にもたくさんあります。
しかし8割は病気予防だというのが私も父も共通する認識です。
焼却の道具は、草焼きバーナー。
300㎡のハウスで2時間ほどかかります。
そして体も痛くなる。キライな作業のひとつ。
長くなりましたが、培土論争とうちやま農園の焼却については以上です。
アスパラの作業をなんとなく行っている人、
今後どうやって収量を上げていこうか考えている人、
どうやって正品率を上げようか悩んでいる人、
そんな方々の一考の一助となれば嬉しいです。
この議論、アスパラサミットだと2,3時間はしちゃうんだろうな・・・(笑)