(おことわり:今回は農家向けに書いてますので、
文字ばかりで申し訳ありません。)
農作物に限ったことではないすが、
ひとつの事業、ひとつの商品で儲け(稼ぎ)たい、という
希望のような、意欲のような、目的は、
当然ながらたくさんの人が持つと思います。
稼ぐとか儲けるというと、甘い話や夢の話に聞こえてしまいますが、
そんな簡単な話はありません。
僕は「アスパラだけで食える農家になりたい」と決めて
もう6年経ちますが、毎年毎年、
そこまで実現する困難な状況にヘコタレそうになります。
タイトルの思いは、私の思いではなく、
そういう思いで農業をしたり相談してくれたりする方が
何名かいるので、肯定も批判もせずに、考えだけ書こうと思いました。
実現可能か不可能かと聞かれれば、可能です。
でも、どの程度で儲けたと感じるか、には個人差があります。
望む生活の質、養う家族の数、抱える経営上の借金などなど。
どの程度儲けたいか、という問いには、
だいたい大雑把な答えが返ってきます。
それなりに暮らせれば、
子どもに十分な時間とお金を使えれば、
60歳には引退できるくらい稼げれば、
豪邸と高級車と高級腕時計と・・・、などなど。
そしてその儲けを達成するには、
それに合わせた経営規模と適正人員と本人の努力が必要です。
アスパラの適正規模や生産量やハウス・露地の作付けについても、
現状から目標に向けた差によって、どうすべきかが見えてきます。
失敗事例が多いうちやま農園としては、
過度の収量を見込むことなく、
かといって過小評価もせず、
掛ける手間も規模に合わせてある程度見込み、
何となく見えてくるものがあります。
ですが、技術・気候・市場価格高騰・暴落などの要因で
良くも悪くも大きく変動する年はあります。
それでも、10年を一区間とすると、大きなズレはないと思います。
書いてて気づきました、アスパラは長期戦です。
単年の計画しかできないのであれば、アスパラは取り組めません。
ザックリでいいので、3年後、5年後、10年後の見通しが必要です。
今年金にならないことを、来年・再来年のためにやります。
投資って、たぶんそういうこと。
果樹はもちろんですが、機械投資の回収計画ともアスパラ作りは似てます。
そして、一番美味しいアスパラはどれか、
みたいなアホらしい競争にも加わる必要はありません。
(もちろん納得いくものづくりをすることは最低限必要)
アスパラの品質は多岐に渡ります。
保存の利くものでもないし、土の影響を大きく受けるため、
どのアスパラが美味しいか、というよりも、
それぞれの天候・土・育て方によってこんな味のアスパラになりました、
と自信をもって言えるはずです。
それだけ、アスパラ自体の味は美味しいと受け入れられているのです。
ここに大きなチャンスがあると思ってます。
米価が上がったことによって稲作農家の経営危機は回避されましたが、
現在の流通状況からは、野菜が近い将来まったく足りなくなるという
状況が起こりそうです。
減反政策が終了し、北海道では産地交付金の付かない野菜作りは
どんどん高齢化し、衰退しています。
地域を守る、農村社会の維持、地域振興などなど、
農業が中心となる地域では、稲作だけでは先細りです。
大規模農業により過疎に向かう農村地域には、
小規模で稼げる農業が必要で、それには園芸品目しかないのです。
アスパラに限らず、ひとつの事業、ひとつの商品で稼ぎたいとなると、
「この作物では負けない」というものづくりを追求していく楽しさがある反面、
経営という難しく苦しいことを同時に行う必要はあります。
その両方を追うということが、継続してひとつの作物を
作り続けるということが達成されると思ってます。
一時的な成功ではなく、継続して成功し続けるため。
長くなりましたが、経営者である農家が、
自らの状況を素直に認めて、目標に向かう。
その過程にはいくらでもアドバイスできるものの、
それに必要な目標の設定や現状認識には、
本人の意志がともなうこととなります。
結局のところ、「経営者はやるかやらないかだ」と
言われるように、決意できるかどうか、だと思うのです。